男の子が生まれる過程

通常、膣の中というのは、酸性の粘液でいっぱいになっているものです。従って、アルカリ性に強いY精子にとっては、そこはつらい環境ということになります。しかし、一定の周期で、酸性の度合いは変化するとされています。

 

膣から子宮への入り口となる子宮頸管の周辺には、子宮頸管粘液という粘膜が存在します。子宮頸管粘液は、排卵日が近づくと、水分を含み、サラサラの状態になり、分泌量も増えてきます。また、分泌される子宮頸管粘液は、アルカリ性です。ですから、酸性であった膣が、排卵日前には、アルカリ性の粘液によって、だんだん中和されてきます。つまり、男の子をつくるY精子にとって、排卵日当日は、かなり通過しやすい状況になるというわけです。そして、逆に、排卵日より前は、女の子をつくるX精子の方が、生き残りやすいということになります。

 

また、人工授精によって妊娠して生まれてきた子供には、明らかに、男の子が多いことが報告されています。この原因は、人工授精に関しては、確実に妊娠できるように、慎重に排卵日を判定して、精液を、その排卵日に注入するということが考えられます。つまり、排卵日当日にセックスするのと同じ状況になるというわけです。膣の中の酸性度がもっとも低いときに精子が入るということは、通常、酸に弱いY精子でも、X精子より数は多いので、有利になるということです。

 

人工授精で、男の子が生まれる理由は、この他にもあります。たいていの場合、粘りの強い精液を注入しやすくするために、1時間ほど容器に入れておきます。そうすると、粘りが取れるだけでなく、Y精子は上へ行き、X精子は下へいき、と容器の中で、精子が分離することになるのです。そして、人工授精では、自然に、上にたまっているY精子を採取し、それが受精する場合が多くなるということです。